猫の「手」がすき
猫と暮らしてまだ5カ月。半年にすらならないのだけど、人間はもちろん、犬ともまったく違う猫という生き物をひたすらに愛しく、面白いと思う。
そして、彼の(うちの猫はオスなので)一番好きな部分を、ひとつに絞るのは本当に難しい。
犬よりもずっと柔らかく、全身骨のない太もものようなもっちりふにゃんとした肉体。もちもち食感のグミのような肉球。細くやわらかな毛。細くなったりまあるくなったり、変化に富んだきらきらの瞳。なだらかな鼻筋から額。掌にすっぽりおさまる後頭部。「ω」そっくりのキュートなひげ袋。
猫は、全身どこもかしこも平和で、触るとあったかい。
無理に一番を決めるとしたら、やっぱり手かなと思う。もちもちの肉球はとても強い。ぎゅっとにぎってくれると、あまりの幸福による切なさで、心臓が掴まれたような気持ちにさせられる。
なにかをしている最中でも、忙しくしているときでも、彼の手が一度ぽむっと、背中や足に触れると、無視なんてとてもできない!という気持ちになる。そして、すべてを一旦中止して、彼と遊んだり、撫でてしまう。
目や鳴き声からはもちろんその時々の感情が伝わって来るけれど、手にも、とてもたくさんの猫の感情が詰まっていると思う。感情が漏れてくる場所というか。なでてほしい、構ってほしいときには、自分から伸ばしてきたり人間をぎゅっと掴み、ちょっと嫌な気分のときには距離を保ってほしいと押し返す。
そういう彼の意思がはっきり見える場所なので、私は猫の「手」がすきなんだと思う。手の触り心地、ぱやぱやとした毛、肉球、まあるい形は、この世のものとは思えないほど可愛い。